お知らせ
皮膚悪性腫瘍
基底細胞癌、有棘細胞癌(扁平上皮癌)、ボーエン病、乳房外パジェット病、悪性黒色腫、軟部悪性腫瘍などがあります。それぞれ特徴が異なりますが、基本は手術で完全に摘出することが重要です。悪性度が低い腫瘍、早期の腫瘍、小さな腫瘍などは、当院でも局所麻酔での手術が可能です。腫瘍の種類や病期によっては、摘出手術に加えてリンパ節郭清や放射線治療、化学治療などを要することがあり、集学的治療が必要な場合には大学病院等を紹介します。いずれの手術においても、感染、疼痛、出血、血腫、発赤、腫脹、縫合不全などの合併症があります。術後瘢痕が目立つことがあります。再発の可能性があります。
基底細胞癌
皮膚は表面に近い部分から表皮、真皮、皮下組織に分かれます。基底細胞癌は表皮の一番下の層にある基底細胞や毛包を構成する細胞から発生する皮膚癌です。皮膚癌の中では最も発生数が多く、最も悪性度が低い癌と言われています。顔面に多く発生し、紫外線、外傷、放射線、熱傷瘢痕などが発生原因と考えられています。不規則な黒色調の斑状・結節状の病変で、中央部が潰瘍化し出血することもあります。転移を来すことは極めて稀です。臨床所見やダーモスコピー所見で診断が可能ですが、診断が困難な場合には局所麻酔で生体検査(生検)し病理組織診断を行います。
治療は摘出手術を行います。小さい腫瘍では、腫瘍の辺縁から3~5mm離して摘出し瘢痕がなるべく目立たないように縫合します。大きな腫瘍では、段階的に手術を行うことがあります。まず、生検により病理組織診断を行います。診断が確定した後、腫瘍を全摘出し(皮膚悪性腫瘍摘出術)、一旦人工真皮等で欠損部を被覆しておきます。さらに病理検査で腫瘍の取り残しがないことを確認した後に、欠損部を植皮術や皮弁術などで再建します。
腫瘍が全摘出された場合には再発は稀ですが、術後長期にわたり外来通院での慎重な経過観察を要します。
有棘細胞癌(扁平上皮癌)
表皮にある有棘層の細胞が癌化してできる皮膚癌です。基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚癌です。ボーエン病や日光角化症などから発生することがあり、さらに紫外線、熱傷瘢痕、放射線、化学物質、ウイルスなどが発生要因として考えられています。小結節状の病変から始まり、次第に拡大して隆起性の腫瘤や、難治性潰瘍を形成します。進行するとリンパ節や他の臓器に転移します。治りにくいびらんや潰瘍、出血しやすい紅色の結節などが出現したら有棘細胞癌を疑い、生検を行い病理組織診断により確定診断します。診断が確定したら、CTやMRIなどの画像診断を利用して転移検索を行います。
治療は外科的切除が第一選択です。腫瘍から5mm~3cm離して切除します。基底細胞癌と同様に、病理検査で腫瘍が取り切れたことを確認してから、植皮術や皮弁術などで組織欠損部を再建します。
早期に診断がつき適切に手術が施行された場合の予後は比較的良好です(5年生存率85~99%)。皮膚よりも深い組織へ浸潤していたり、リンパ節転移、他臓器転移があれば予後不良となります。
ボーエン病
表皮内に生じる皮膚癌の一つです。表皮内に病変がとどまっているものを表皮内癌といい、いわゆる早期癌の状態で、通常は転移することはありません。しかし進行するとボーエン癌と呼ばれ、有棘細胞癌のように転移し予後不良となる場合があります。紫外線やウイルスなどが発生に関与すると考えられています。表面が赤くザラザラした状態で、形は円形やいびつな形をしています。見た目が慢性湿疹に似ていることがあり、長期間外用治療が行われていることがありますが、軟膏で改善しない湿疹様の皮疹はボーエン病を疑い病理組織診断をすべきです。
治療は摘出手術を行います。病変部から数mm離して切除します。小さな病変は摘出後欠損部を縫い寄せて閉鎖します。大きな腫瘍は植皮術や皮弁術を要します。切除後の転移や再発は稀です。
乳房外パジェット病
アポクリン汗腺から発生する癌です。外陰部、肛門周囲、腋窩に発生します。癌細胞が表皮内にとどまっていれば転移することはありませんが、深く進行するとリンパ節に転移することがあります。見た目は慢性湿疹や真菌感染などと似ているため、外用薬を処方されることもありますが、外用薬で症状が改善しない場合は生検による病理組織診断で確定診断します。病理組織診断後、CTやMRIなどで転移がないか全身検索を行います。
治療は摘出手術を行います。病変の境界が不明瞭なものや、癌細胞が病変部から少し離れた場所に存在することもあるため、摘出手術を行う前に周囲組織を複数箇所生検し周囲に癌細胞が存在するかどうか調べてから切除手術を行うこともあります。リンパ節転移、他臓器転移がある場合は、化学療法を主体とした治療が行われます。